日本が船長を逮捕した報復として中国が拘束したのは、大手ゼネコン・フジタの社員4名だった。これは、たまたまそうなったわけではない。完全に狙われたのだ。国際ジャーナリストの落合信彦氏はこう語る。
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かつて私も中国を取材中、天安門広場で写真を撮っていただけで、公安に1時間ほど拘束されたことがあった。極論すれば、中国では、特定の外国人を拘束しようと思ったら、どんな罪状でもデッチ上げられる。中国内にはいくらでも拘束できる日本人がいたのに、なぜ、フジタの社員が狙い打ちされたのか。
彼らが遺棄化学兵器処理事業の受注を狙って活動していたからである。この遺棄化学兵器処理事業とは、旧日本軍が中国に放置したとされる毒ガスなどの化学兵器を、日本が責任を持って廃棄するというものだ。これまで、500億円以上の日本の金がつぎ込まれ、最終的には50兆円を超える金がかかるともいわれている。
そもそも、この事業は日本が行なう必要があるのか否か、議論も噴出しているいわくつきのもの。1945年の終戦にともない、日本軍から中国軍及びソ連軍に化学兵器が引き渡されており、遺棄したのは日本軍ではない、との指摘がなされているのだ。そして、この事業は9月4日に本格的にスタートしたばかりだった。
中国側はフジタの社員を拘束することで、「遺棄化学兵器処理事業で日本に文句はいわせない」とのメッセージを送った。要するに、黙って金を出せ、ということだ。
※週刊ポスト2010年10月22日号