日中交流の最前線にいる現地駐在員たちは、反日運動が巻き起こる度、常に誹謗中傷の対象になる。しかし今回の尖閣問題騒動では、それだけではなく「身の危険すら感じる」(広東省在住の40代駐在員)という事態に陥っている。
「もうサンザンですよ。道を歩いているだけで“お前日本人だろ!”と見ず知らずの中国人から因縁をつけられる。電器店に不良品を返品しに行けば、応じない上に店員たちから『小日本』『日本鬼子』と罵られるし……。もう安心して外も出歩けません」
こう話すのは、某メーカーの広東省支社に勤める40代の日本人駐在員である。尖閣諸島沖での一件以降、中国在住の日本人駐在員たちは、非常にシビアな立場に置かれているという。街に出れば嫌悪の眼で見られ、身近な中国人からは、強引な要求を突きつけられる。
別のメーカーの広東省在住の30代駐在員が憤る。
「ウチの会社で働く若い中国人社員は、尖閣の一件の直後に“私は優秀なんだから給料を2割上げろ。でなければ辞める”と言い出した。事なかれ主義の支社長は、結局給料1割アップまで認めてしまった。ヤツらの思うつぼです。日本政府の罪は大きいですね。“日本人は押しに弱く、どんな要求でも飲んでしまう”というイメージを中国人全体に植え付けてしまった」
さらに「夜の街」では、風俗店での日本人駐在員の検挙が増えてきている。事実、在広州日本国総領事館は、9月13日付で(買春による摘発が相次いでいます)と、ホームページ上で注意を促している。同領事館によれば、(いずれの邦人もマッサージ店等で摘発を受け身柄を拘束され、行政拘留15日に処せられて)いる。拘置期間は、手錠をかけられて、廊下などに長時間放置されるケースもあるという。
表面化している以外にも、摘発激化の噂は絶えない。上海在住の50代の日本企業駐在員がいう。
「上海では、カラオケクラブにガサ入れがあって、日本人50人が拘束されたという噂が飛び交った。また、ある日本人がホステスをホテルに連れ込もうとしたところ、尾行してきた公安に捕まったという話も聞いた。怖くて夜は一歩も外に出られない。夜間外出禁止令を出す日本企業も多い」
※週刊ポスト2010年10月22日号