領土、経済、軍事と中国にやられっぱなしの日本だが、その中国に日本はいまだ経済援助を続けていることをご存じか。日本の対中ODA(政府開発援助)の総額は「ローン」も入れれば6兆円を軽く突破している。一体、何のための援助か。ジャーナリストの青木直人氏が報告する。
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中国は2年後に始まる第12期5年計画の最大の課題を「環境」「省エネ」対策においている。利益の上がらないこの種の対策に、地方政府や企業はカネを使いたがらない。
そのための切り札が公的融資、なかでも条件のいい日本からのODAなのである。中国が期待しているのは日中共同出資の「日中省エネ環境基金」である。「共同出資」とはいえ、中国側は内部向けに「これは円借款に代わるあらたな援助の受け皿」と公言している。
日本に対して無法の限りを尽くす中国にやすやすと援助復活をさせることはない。そもそも中国が自国の環境対策に自分でカネを出すのが当たり前の話なのだ。
そして日本は、対中援助の広報と情報開示をすべきである。外務省ホームページのODAには日本語だけで、中国語版がない。これでは中国向け広報にはならない。中国人が中国国内からアクセスしても理解できないのだ。
たとえば、これまで日本政府はODA受注企業をほとんど明らかにしていない。「中国政府からの意向」(外務省援助課)だからだ。中国政府が情報を隠すのは、援助に関与する企業やゼネコンが例外なく時の最高指導者と関係があるからである。
第1次円借款で建設された山東省の港湾整備を請け負ったのは鄧小平の長男が会長を務める会社だった。第3次円借款を使って行なわれた海南島の通信と港湾などの開発整備は趙紫陽の指定の企業が受注している。海南島はいまでは国内最大の海軍基地に成長している。
これこそ援助に寄生する中国共産党幹部と家族の腐敗構造であり、中国国民に知られることを恐れる情報である。日本政府は血税者たる国民目線で受注企業を明らかにし、中国国民向けに中国語でも情報公開すべきである。これだけで中国は狼狽する。有力なけん制となるのである。
※SAPIO2010年11月10日号