国内

北海道の中学教師 「ジャミラ」を題材に人間の善悪を説明する

 円谷プロダクションが制作するウルトラマンシリーズは、『ウルトラマン』(1966~1967年)『ウルトラセブン』(1967~1968年)ほか現在に至るまで20を超える作品が放映されている。
 
 北海道苫小牧市の公立中学校で国語を教える、神谷和宏教諭(37)は13年前からウルトラマンを題材に、善悪を問う授業を行っているが、神谷氏が教材とするのは、1970年代半ばまでに作られた初期作品も多く含まれる。それは同時期のウルトラマンが、叙情性に富んでいるからだ。

 例えば『ウルトラマン』に登場する怪獣ジャミラは、人間の宇宙飛行士だったが国に見捨てられ、宇宙を彷徨った末、変わり果てた怪獣だ。その恨みを晴らすべく国際会議場を襲い、ウルトラマンはジャミラが社会から見放された人間であることを知りつつ、“人間”のために倒さざるを得ない。
 
「あなたは、ウルトラマンがかざした正義をどう捉えますか」と神谷氏は記者に問いかけた。「大義を守ったウルトラマンだったが小さな正義は守れなかったのではないか」という記者の答えに、優しい笑みを浮かべながら神谷氏は語った。

「子供たちは、みんな“ジャミラが可哀想だ”と言っていましたよ。ウルトラマンは正義の味方というより、人間の味方に過ぎないことを、鋭い感性で感じ取っているんですね。敵役にだってやむにやまれぬ事情がある場合もあるし、怪獣や宇宙人が悪とも限りません」

 例えば『帰ってきたウルトラマン』に登場するケンタウルス星人は、人間の女性に扮してスパイ活動をする宇宙人だ。しかし、次第に人間に思いやりを抱くようになり最後には怪獣を道連れにして自爆してしまう。敵ですら、善悪の境界を揺れ動くのである。

「この授業の究極の狙いは、子供たちに社会を知る力を付けさせることです。我々がテレビを通して見る世界だけが情報ではない、と生徒には口うるさく言っています。むしろ、その裏に真実が隠されていますから」

※週刊ポスト2010年11月19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

中学時代の江口容疑者と、現場となった自宅
「ガチ恋だったのかな」女子高生死体遺棄の江口真先容疑者(21) 知人が語る“陰キャだった少年時代”「昔からゲーマー。国民的アニメのカードゲームにハマってた」【愛知・一宮市】
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認め全店閉店へ(左・時事通信フォト、右・HPより 写真は当該の店舗ではありません)
【こんなに汚かったのか…】全店閉店中の「すき家」現役クルーが証言「ネズミ混入で売上4割減」 各店舗に“緊急告知”した内容
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
江口容疑者と自宅
《16歳女子高生の遺体を隠し…》「6人家族だけど、共働きのご両親が不在がちで…」江口真先容疑者(21)が実家クローゼットに死体を遺棄できた理由
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える”心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン