去る9月末、内閣は消費者庁にプロジェクトチームを発足させた。その名も「こんにゃく入りゼリー等の物性・形状等改善に関する研究会」。2008年までに22件の死亡事故が発生したこんにゃくゼリーの「形と硬さ」の基準を決めるためのもので、目下、「物性・形状改善サンプル」を作製し、「窒息事故リスク」を評価する実験が行なわれている。つまり、“こんにゃくゼリーはどれほど危険か”を専門家に分析させているのだ。
研究会の報告書には、すでに信州大学で行なわれた実験結果が紹介されている。例えば、頭部模型(写真)を使用した「吸引試験」。喉まで吸い込んだ時に、食品が口腔内で砕けるかどうかを調べる実験だ。結論は、
「こんにゃく入りゼリーの多くは破断されることなく吸引。豆腐やプリンは砕ける」
というもの。そりゃそうだろ、とツッコむのは素人考えだ。続いては「破断試験」。「噛み切りやすさ」の測定である。結果はこうだ。
「多くのこんにゃく入りゼリーは破断されない」
ちなみに「ビー玉も破断されない」としているが、これを当然と片付けずに実験したことに意味がある。このほかにも「滑動試験(口の中での滑りやすさ)」「呼出試験(呼気などによるはき出しやすさ)」などがあり、いずれも「こんにゃく入りゼリーは窒息リスクがある」という結論に至った。
「窒息事故はこんにゃく入りゼリー以外の食品や、食品以外の物(ビー玉など)でも起こります。そこで、信州大学の協力を得て危険性を比較しました。現在は様々なゼリー系食品の形状や硬さを変えたサンプルを日本女子大学の協力を得て作製しており、改めて口腔模型試験を行なう予定です」(消費者庁消費者安全課)
研究は年末にはまとめられ、来年からは「窒息リスクの低いゼリー」の基準作りに取りかかるという。もっとも業界ではすでに自主的に、「クラッシュタイプ」などに切り替えて対応済みである。
なお、研究のために消費者庁が支払った委託費は、「すべて合わせて約600万円」(同前)であった。
(写真は消費者庁HPより)
※週刊ポスト2010年11月26日・12月3日号