日本が尖閣諸島を実効支配している現状では、中国側もそう簡単に手は出せまい、そう考えるのは、お人好しの日本人だけだ。日本の国境問題にいち早く着目し、尖閣に上陸・撮影した経験を持つ報道写真家の山本皓一氏が、中国人たちの驚くべき“妄動”を明かす。
************************
先般、アメリカを訪問した温家宝首相は、現地の華僑を集めた席で、「尖閣列島は中国固有の領土であり、日本に寸土も譲るつもりはない」と断言した。この発言と呼応するかのように、世界に散らばる華人系団体が、来年の6月に600隻から800隻の大船団を擁して、大挙して魚釣島に上陸するという計画があることが明らかになっている。
実際にどれほどの規模になるのかは不明だが、五星紅旗とともに、「中国領土」と刻まれた石碑を建て、中国で航海や漁業の守護神である媽祖像を建立して居座るとの情報が伝えられている。
そもそも彼らは、04年に魚釣島に不法上陸した際、島にあった尖閣神社を破壊した“前科”がある。そのため、元島民である古賀家の屋敷跡や記念碑などを壊し、自分たちの石碑を建てる行動に出る可能性も高い。この計画は、すでに在米華僑を通じて大がかりな資金集めが行なわれているという。
彼らがこれほどまでに尖閣諸島やその周辺海域に石碑を建てることにこだわるのは、裏を返せばこの地を日本が実効支配しているからではないか。中国は今のところ尖閣に何の“足場”も築いていない。その焦りが、上陸計画という形になっていると思われる。
かつて周恩来や鄧小平は「棚上げ論」を主張した。その後、中国側がこの論を律儀に守ってきたのかと言えば、とんでもない。その間にも中国は、官・軍・民挙げて“尖閣占領”を「水面下」で推し進めてきたのだ。何も知らず、平和の惰眠を貪っていたのは、わが日本だけだったのである。
※SAPIO2010年11月24日号