尖閣問題で日本への圧力を高める中国。他国の領土を乗っ取るのはもはや中国のお家芸ともいえる。中国がこれまでとってきた乗っ取りの手法をジャーナリストの櫻井よしこ氏が解説する。
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中国は1992年に南シナ海にある西沙、南沙、東沙、中沙諸島のすべてを「自国領である」と宣言しました。歴史的事実とも現実ともかけ離れた領有権の主張ですが、彼らは事実など一切気にしません。
まず言葉によって中華帝国の版図を宣言し、軍事力を背景に、嘘や謀略を駆使してその実現を図る。その結果、南シナ海は、中国が実効支配してしまっています。
その手法には一定の型があります。まず漁民を装った軍人を、周辺の島々や海に進出させるのです。元々の領有権を有する国々が、船を拿捕(だほ)したり「漁民」を捕らえると、それに対して海軍の軍艦を白く塗り替えて、所属を国家海洋局に移しただけの事実上の軍艦を動員して、報復もいとわないという姿勢で圧力をかけ、相手を屈服させます。
中国は狡猾にも、国際社会の非難を回避するために、事実上の軍艦を派遣しながら、圧力は軍事的なものではないという形を整えています。
この構図は、尖閣諸島で起きていることと見事に重なります。
※SAPIO2010年12月15日号