今年7月、中国で「国防動員法」なる法律が施行された。海外に住む中国人にもいざ有事の際には、中国政府から命令が下るという。この法律の裏にある危険性をジャーナリストの櫻井よしこ氏が解説する。
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日本がたとえ軍事力を強化しても、そもそも政治家や国民に国防意識が乏しいのでは「張り子の虎」です。
10月26日の参議院外交防衛委員会で、自民党の浜田和幸参院議員が今年7月に中国で施行された「国防動員法」について質問しました。
国防動員法は外国に居住する中国人、中国で活動する外国企業及びその従業員にも適用され、いざ有事の際には、中国の国務院と中国軍事委員会が共同で「領導」つまり命令を下すというものです。
中国で仕事をしている日本企業が事実上、技術供与を強要される可能性があるのみならず、日本に外国人登録をして住んでいる68万人の中国人が、中国国務院と中央軍事委員会の指示で動くという法律です。そうなれば、本国からスパイやテロ、騒乱を含めて、どんな命令が下されるかわかりません。
日本に対する敵対行動に68万人が走らされる可能性があるということです。自衛隊員は23万人弱、その3倍近くの在日中国人の動きを支配できる国防動員法について、北沢俊美防衛相は、〈ちなみに日本も昭和16年に総動員法を発令して、これを、中国のいまのを見ますと、まったく日本の昭和16年にやったのと同じことをやっておるなとしみじみ感じた次第でありまして〉と、まるで他人事のようです。
日本の国家総動員法が戦後の終身雇用に役立ったという答弁でしたが、的外れだと感じました。
政治家だけではなく国民の間にも、自衛隊を強化する議論となると、タブー視する空気が根強くあるのも事実です。
しかし、「平和」は待っていれば空から降ってくるものではありません。強い力を背景に勝ち取るものなのです。国民の国防意識の喪失は、結果として平和を遠ざけてしまうのです。
※SAPIO2010年12月15日号