いざとなれば自らの生命を危険に晒して、日本の防衛に当たる自衛隊員たち。しかし、我が国の防人たち23万人の日常を我々はあまりに知らないのではないか。組織内における出世やカネ、家庭生活における悩み。そしてそれらを乗り越えていくモチベーション……。国防を考える時、まず現実の自衛隊を直視したい。
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自衛官と言えば、衣食住の面倒見がいいとよく聞く。ところが、『学校で教えない日本陸軍と自衛隊』など自衛隊関連の著書を多く持ち、愛娘も防衛大卒の幹部自衛官という荒木肇氏は、最近は少し事情が異なると言う。
「予算の削減で、戦闘服も2年間で3着支給だったものが、2着に減らされたようです。当然、それでは足りませんから、自費で購入しますが、迷彩服なら上下で4万円。しかも階級章や、演習で顔に塗るペイント代は自腹なんです」
とはいえ、制服は夏服、冬服だけでなく、ワイシャツやネクタイ、ベルトも貸与される。貸与なので、新品が支給されるとそれまでの服は隊に返却する。回収された制服はクリーニングに出され、新入隊員に再支給される。
では衣食住の食はどうか?
海自と空自では専門の給養隊員が、陸自では駐屯地にいる部隊から集められた隊員が交替で調理をしており、3食付きが基本。訓練の厳しさに応じて「増加食」があるほか、航空機や潜水艦の乗組員には「加給食」があり、給料だけでなく食でも優遇されている。
食事は訓練で体を使うためカロリーが重視され、成人男子の1日の摂取カロリーの1・3倍になるよう計算されている。ご飯のみおかわり自由なので、ふりかけが必須だという。
住まいはどうか?
自衛官の場合、幹部なら基地の外に住めるが、曹長以下は原則、基地内の営舎(寮)住まい。プライベートは無きに等しいが、この場合、住居費はかからない。営舎から出る条件は、【1】結婚している、【2】独身だが2曹で年齢が30歳以上、【3】独身だが1曹以上。
結婚している場合は、基地の外の官舎に住むことになるが、駐車場付きで1か月1万円台と格安。
だが、海上自衛官の夫を持ち、マンガ『突撃! 自衛官妻』の著者・日辻彩氏はこう言う。
「安いのはいいですが、築30年の官舎で戸の立て付けも悪く、すきま風が吹き込むので、冬は凍えるほど寒いんです。そして、引っ越すとなると、畳や襖などの修繕費を実費でとられるんです」
官舎が空いていない場合は、住宅補助費をもらって、民間物件に住めるが、それ以外は、官舎住まいか、実費での生活を選ぶほかない。
※SAPIO2010年12月15日号