常に時代を騒がせてきた孫正義・ソフトバンク社長が目下、政府と激論を交わすのが、光ケーブルで日本中を覆い尽くす「光の道」構想である。孫氏に「日本再生論」を質した。
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――「日本はものづくりの国だ」という議論についてはどう考えているのか。
ものづくりには2つあって、ひとつは「アッセンブリー(組み立て)」、もうひとつは「設計・開発・イノベーション」です。アッセンブリーでは、日本はもうアジア諸国に対抗できませんから、設計・開発・イノベーションでやるしかない。
――IT化によるものづくりとは?
典型的なのが、アップルです。アップルは10数年前に倒産寸前の状態に陥りましたが、一時期会社を追われていた創業者のスティーブ・ジョブズが復帰すると、一気に経営を立て直し、いま時価総額では世界第2位になっています。
ジョブズが復帰してすぐに行なったのは、工場をすべて売却することでした。アップルの売り上げの8割以上がハードですが、いま、工場はひとつも持っていません。アップルが行なうのはハードとソフトの設計・開発・デザイン、そしてマーケティングだけ。製造を請け負っているのは台湾のフォックスコン社で、そこが中国の工場を使って生産している。
フォックスコンは部品価格プラス5%で製造を請け負っていて、うち3%で中国人の人件費その他をまかない、2%を自社の利益にしている。対してアップルは、売り上げ全体の30%を総取りしてしまう。
――自前の工場で作るより、はるかに利益が上がる。
その通り。中国のGDPは今年日本を抜いて世界2位になりますが、儲けの少ない組み立て生産によるもの。人件費だけで利益はほとんどないといっていい。これから日本が国家として目指すべきは、アップルのようなものづくりです。日本国内で組み立てをする必要はありません。中国やベトナム、インドなどで生産し、そのかわり日本は30%の利益を得ればいい。
※週刊ポスト2010年12月10日号