惑星探査機はやぶさの帰還や、「地球外生命の可能性のドアを開く」というNASAによる宇宙生物学上の発見に伴い、“宇宙ブーム”となっている。アジア初の“女性飛行士”向井千秋さんの夫である、慶應義塾大学医学部准教授の向井万起男氏は、宇宙ブームが次に向かう先は、太陽系第4惑星の「火星」である、と力強く語る。
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火星は人類のロマンです。だって惑星ですから。月は地球のそばにある衛星でしょう。一方、火星は地球と同じ惑星なわけです。近未来的尺度で考えると、人類が行ける惑星は火星しか考えられない。
月に行くのとはかかる費用のケタが違います。なにせ遠い。月なら片道4日くらいで行けちゃうわけです。飲料水と食べ物を、3人×10日間分持てば、行くことができる。でも火星となると、往復と現地での活動を含めてだいたい2~3年かかるといわれています。
宇宙船にはまず、地球との交信や撮影のための機材を積まなくてはならない。仮に8人が2年間火星に行くと考えると、飲んだり食べたりする食料や水なんか、地球から持って行けない。重くて絶対に持ち上がりません。
ものすごい量の飲み水と食料をどう賄うか、飛び続けるエネルギーをどう調達するかが課題です。当然、排泄物は大も小もリサイクルしないといけない。尿はリサイクルして飲み続ける。
ジョージ・W・ブッシュが火星探査を発表したとき、乗組員6人の構想だったんだけど、2年の往復で約6トンの固形排泄物を排出するとされた。
でね、米で6トンの固形排泄物を宇宙へポイ捨てせずに宇宙船のなかでリサイクルしようという研究が行なわれているの。ウンチから肥料や飲料水を作ることができるらしい。この肥料を使って植物を育てるんですよ。
さらにすごいのが、この固形排泄物から電気も作れるらしい。最近発見された微生物とウンチを一緒にしておくと、なんと電気が作られる。利用できるものは、なんでも利用して、一切の無駄を省いているんですよ。
※週刊ポスト2010年12月17日号