議会を無視して専決を連発し「市民減税」を実施しようとしてきた鹿児島・阿久根市の竹原信一・市長が12月5日に行なわれたリコール投票の結果を受けて失職、2011年1月16日に出直し選挙が行なわれる。
阿久根市政について研究する鹿児島県立短期大学講師の山本敬生氏(行政法)はこう分析する。
「今回のリコール投票結果を受けて、『竹原市政を市民が否定した』と報じられていますが、私は『竹原氏の手法に市民がお灸を据えた』と見ています。つまり、市民は『竹原氏の政策には賛成』というのが大前提なのです。
阿久根市の経済は極めて悪い。基幹産業だった漁業が衰退したことに加え、近年は隣接する出水市から企業の撤退が相次ぎ、出水に通勤する阿久根のホワイトカラー層の収入も下がっている。
その中で高水準の給与を貰っている市役所や市議への不満は高まっている。竹原氏の行なった減税や手数料値下げは、市政改革の覚悟として市民にはとてもわかりやすい政策です。出直し市長選は“お灸”ではなく、政策論争が中心になる。その場合、圧倒的な知名度と実績を持つ竹原氏が有利だと思います」
市長不在の留守を預かる仙波副市長は、本誌にこう語った。
「竹原さんが進めてきた市のコストカットは市民の願いだと信じている。1月の選挙は、それを何としても阻止したい議会、自治労、そして記者クラブとの戦いなのです」
政策実現のために専決という“非常手段”を繰り出す竹原氏、そして自らの特権を侵そうとする勢力に対して、あらゆる手段で潰しにかかる政官報の「既得権益スクラム」。
互いに一歩も引かない構えを見せているが、どちらが本当に「市民のための戦い」をしているのか、有権者はそこを見ている。
※週刊ポスト2010年12月24日号