中国は利を得るためなら表の顔を裏の顔を巧妙に使い分ける。数々の美名のもとに、今日も中国は日本に謀略の攻勢をかけている。ジャーナリスト・櫻井よしこ氏が指摘する
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中国の微笑外交の手段のひとつが、人事交流です。中国の青年と日本の青年を交換留学させようといわれて、日本側が友好促進のつもりで熱心に中国人留学生を受け入れると、それがいつのまにか中国の工作員が跋扈する下地になってしまいます。
日本の大学で学ばせ、大学の教職に就かせると、学者の肩書きを持ちながら中国人教授の多くが歴史に限らずおよそすべてについて、中国の政治的主張を補強、強調するような内容で教えます。その人たちの幾人かは頻繁にメディアに登場しますが、その発言は中国共産党のプロパガンダそのものです。日本人はその言葉を鵜呑みにしてしまうほど、お人好しなのでしょうか。これも知的に日本を取り込んでいこうとする謀略の一面です。
中国が世界各国で展開する教育機関「孔子学院」にも警戒が必要だと思います。中国政府が運営費の一部を補助することから、大学側も飛びつきやすいのでしょう。日本でも2005年に立命館大学に第一号が開設されたのをきっかけに、現在では13の大学に広がっています。
どう見ても、孔子学院は中国文化がいかに優れているかを宣伝するための「世論戦」の一端です。欧米諸国では、中国政府が国策事業を通じて直接教育に関与することに、懸念の声が上がっていますが、日本政府からはそんな声はまったく聞こえてきません。
中国との経済関係に依存しすぎることは絶対に避けるべきでしょう。尖閣問題で中国は日本への団体旅行をキャンセルさせるなどしました。頼りすぎれば、いざというときにはそれが日本側の弱みになります。
※週刊ポスト2011年1月28日号