計700万点を超える収蔵品を誇る大英博物館。その中の日本絵画、浮世絵コレクション内に江戸時代の人々の性生活を題材にした浮世絵である「春画」が含まれている。
明治時代以降、西欧の影響を受け、「性」に対する意識が変化するとともに春画も海外に流出。反対に西欧の美術愛好家たちは春画に魅了され、芸術品として収集してきたという経緯がある。近年では世界各地の有名美術館で展覧会が開催されている。
世界最古にして最大級の公立博物館である大英博物館にも、春画は250点以上も所蔵されている。2013年には、同博物館で春画展の開催も予定されているほどだ。
ここまで春画が海外で人気なのはなぜか。長年にわたり春画を研究してきた、浮世絵研究家の白倉敬彦氏が解説する。
「性をタブー視するキリスト教的宗教観が強い西欧では、あまりに自由で即物的に性を描いた春画のインパクトは絶大だった。江戸時代の日本ではセックスの禁忌事項はほとんどなく、オーラルセックスや複数プレー、媚薬や道具を用いての行為なども普通のことでした。現代にあるセックス関連の事項で、江戸時代になかったものは皆無といっていいでしょう。しかも、日本人がそれら奔放な性を屈託なく享受していたという事実も衝撃的で、日本の性文化を表わす資料としても価値が見出されたのです」
※週刊ポスト2011年1月28日号