「少子高齢化」で国力に深刻な影響を及ぼすことが予想される日本。国力の衰退を防ぐにはどうすべきか、大前研一氏が提言する。
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少子化による国力の低下に歯止めをかけるには、抜本的な少子化対策が不可欠だ。そのための一つの方法は移民の受け入れである。今の日本は定年退職する人が毎年80万人いる一方で、新たに労働市場に入ってくる人は同40万人しかいない。ということは、年間40万人の移民を入れなければ現在のGDPを維持することすら不可能だ。
日本は移民に対する拒否反応が強いが、世界には移民を経済成長の起爆剤に使っている国がたくさんある。
たとえば、オーストラリアは1901年に制定された移民制限法に基づく「白豪主義」(白人最優先主義とそれに伴う非白人への排除政策)により、人口は約1600万人にとどまっていた。しかし1972年に白豪主義を撤廃後、台湾、香港、シンガポール、中国から華僑を中心に約600万人の若い移民が流入して2200万人を突破した。だから、今のオーストラリア経済は非常に元気で勢いがある。
移民国家のチャンピオンは、最近まで年間200万人を受け入れてきたアメリカだ。いまシリコンバレーでインド、ロシア、台湾、イスラエルからやってきた人たちが主力として活躍しているように、創造力や構想力が必要なIT産業やエンターテインメント産業は移民が支えている。それがアメリカの“繁栄の方程式”であり、アメリカの国力は移民が生み出してきたといっても過言ではない。
※週刊ポスト2011年1月28日号