江戸時代の人々の性生活を題材にした浮世絵である春画は、明治時代以降、西欧の影響を受け、「性」に対する意識が変化するとともに海外に流出。大英博物館にも所蔵されている。
春画は、描かれている内容だけでなく、構図や色彩感覚など、アートの技法に対しての評価も非常に高い。意外だが、春画で特徴的な性器の誇張表現は、西欧の美術理論に多くの影響を与えたのだという。
浮世絵研究家の白倉敬彦氏は語る。
「性器を大きく描く“デフォルメ”という表現は、当時写実主義全盛だった西欧にはない発想でした。日本には、現実そのままの描写では面白くない、いかに絵画を絵空事にするかという芸術理論があったのです。こうした日本絵画の装飾性は、『ジャポニズム』という形でブームを呼び、ゴッホやモネなどの印象派画家を生むきっかけとなりました」
世界の著名な画家に大きな影響を与えるほどの高い芸術性、そして当時の日本の性の奔放さを知るための資料という意味でも、春画は貴重な存在なのである。
※週刊ポスト2011年1月28日号