中国脅威論が叫ばれる中、その最前線に立つのが台湾だ。しかし、国民党の馬英九政権になって2年半、台湾は脅威に立ち向かうどころか、急速な中国化に進んでいる。もはや強大化する中国には恭順しかないのか。かつて台湾の民主化を指導した李登輝・元台湾総統が、日本がとるべき中国脅威への処方箋を説く。
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日本の最大の問題は、これまで直視せず、修正してこなかった憲法第9条をどうするのかです。戦勝国アメリカが、日本を二度と軍事大国にさせないために、押し付けたのが日本国憲法です。自国で国家を守ることを放棄し、このままアメリカに依存していては駄目です。
海軍力の増強に力を入れ、航空母艦の配備をめざす中国は、数年前から西太平洋の主導権争いに名乗り出ています。南シナ海に面するASEAN(東南アジア諸国連合)各国との関係もギクシャクしていますが、東シナ海も同様の状況にさらされています。周辺諸国にとっては大事な資源が埋蔵された国益に直結する領海です。中国は地下資源について、徹底的に調べ上げてもいます。
日本の領土を侵犯する敵に対して、軍備拡大は不可欠です。現段階では、有事の際にアメリカヘ特使を出し、具体的な約束を取り付けるのも良い方法でしょう。軍事力に頼らざるをえない局面もあるはずです。
とはいえ、中国の海軍力はまだまだ、日本の海上自衛隊にも劣ります。しかも大陸国家の中国が海軍力の強化というのは、懸命な判断とは思えません。
現状、アメリカ海軍は、保有する武器、機動部隊、航空母艦、潜水艦などにおいて、中国海軍とは比較にならない圧倒的に有利な立場にあります。中国は旧ソ連方式で人工衛星と核ミサイル、原子力潜水艦の3つを重視しています。しかし、それで中国が西太平洋で絶対的なプレゼンスを持てるかといえば疑問です。これらの点は冷静に分析すればいい。
※SAPIO2011年1月26 日号