かつてNHKで働いたこともあるジャーナリスト・上杉隆氏は、NHK会長人事をめぐる騒動をうけて、こう書いている。
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NHKは既存の放送利権を守ることのみに終始している。
その最たるものが、地上デジタル放送だろう。「デジタルの伝道師」と自称した海老沢勝二元会長をはじめ、地デジはNHKと政治が一体となって進められてきた。
テレビ局にとっては、放送(テレビ)と通信(ネット)の融合が進めば、放送という免許事業、すなわち既得権益の消失につながる。さらにNHKにとっては、「受信料徴収モデル」の崩壊をも招くことになる。
そうした既得権益を守るために導入されたのが、地デジ移行に伴うアナログの完全停波という国策なのである。だからこそ、地デジのPRではNHK・民放の人気女性アナウンサーが揃って啓蒙活動に努めることになる。
私は、『月刊現代』2005年4月号で、こうしたテレビ局の思惑を暴いたうえで、2011年7月24日をもって地デジ移行でアナログを完全停波することは、政策的にも技術革新(イノベーション)の面からもおかしいと指摘した。
※週刊ポスト2011年2月4日号