「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」
国立署の新米刑事・宝生麗子は財閥グループのお嬢様。彼女が遭遇する数々の難事件を毎回、冒頭のような毒舌を交えながらいとも簡単に解明してしまうのが執事の影山だ。
東川篤哉さん(42)による『謎解きはディナーのあとで』〈小学館・1575円〉は、令嬢刑事と執事のユーモアあふれる掛け合いで謎解きが進む本格ミステリー小説で、売り上げは発売後4か月で47万部を突破した。
ここ数年ブームを巻き起こしている執事をモチーフにしているところも人気の一因。書評を数多く手がけるライターの瀧井朝世さんはこういう。
「ふだんは毒舌を吐きながらも、いざというときにちゃんとサポートしてくれる執事は女性にとって憧れの存在。とにかく、キャラ設定が巧妙です」
本作品が爆発的に売れて、一躍注目を集めている著者の東川さんが作家デビューを飾ったのはいまから9年前のこと。
「以前はガラス壜メーカーで経理の仕事をしていたんですが、26才で一念発起。退社をしてデビューするまでの8年間は貯金を切り崩しながら月収12万~13万円のバイトで食いつないでいましたね。一寸先はホームレスかという生活でした」(東川さん)
実は現在も家賃5万円のアパートに暮らしている。「小説では豪華なディナーが描かれてますけど、実は“レンズ豆って何?”なんてこともしょっちゅう。高級レシピとかは、図書館で調べながら書いています」(東川さん)
しかも東川さんは、このご時世に携帯電話を持たないアナログ派。原稿を書くためのパソコンは、インターネット接続はしていないという。
「でも、登場人物はみんな携帯電話を持ってるんですよね。使い方を間違えていやしないかと、書きながらドキドキしています(笑い)」
※女性セブン2011年2月3日号