予測では、今年の東京は昨年の8.5倍ものスギ花粉が飛散し、観測史上2番目の多さになるという。そういえば「花粉の巣窟」を仕事場とする人たちは、どうやって対策しているのだろうか。
林野庁の資料によれば、首都圏・中京圏・京阪神地域へのスギ花粉の飛散に強く影響を与えると推定されるスギ林は、78市町村に存在する。そのうちの一つ、東京都西多摩郡日の出町にある、東京都森林組合本所・業務課計画係担当係長の鶴巻潔氏はこう語る。
「もちろん森林整備員にも花粉症に悩んでいる人は少なくありません。基本的には病院で治療を受けたり医師に処方された薬を飲んだりして対策をとっています。中には鼻の通りを良くするために、鼻の穴にオリーブオイルを塗って作業する人もいますね。
私が聞いた中で驚いたのは、ある森林整備員が知り合いから“スギの葉を煎じて飲むと花粉症に効くらしい”という話を聞き、早速実践したところ、1年ほどでほぼ治ってしまったという話です」
その方法とは、スギの葉を鍋で煮て、にじみ出てきた成分をお湯で薄めて毎日欠かさず飲む、というもの。これが医学的にどのような作用をもたらしたかは不明だが、“毒をもって毒を制した”という興味深い例だ。
実はこの方法、関係者の間では有名らしい。福島県にある「いわき市遠野オートキャンプ場」の管理責任者、阿部修治氏も、この「スギの葉茶」を実践した一人だ。「花粉飛散の時期には、キャンプ場の目の前のスギ林が、山火事が起きたかのように染まる」と語る阿部氏は、5年前にこの職場に赴任、2年前に花粉症を発症した。
「以前、人づてに“いいらしいよ”と聞いてやってみました。花粉が飛ぶ前の時期の若葉をやかんに入れ、水を注ぎ足しながら何時間もコトコト煮出して飲むんです。体内にあらかじめスギの成分を入れておくという意味で、インフルエンザの予防接種のようなものではないでしょうか」
※週刊ポスト2011年2月11日号