多くの社員がリストラされた日本航空。花形職業といわれたスッチーこと客室乗務員をやめた人々はいまどんな生活を送っているのか、ジャーナリストの山藤章一郎氏がそんな一人に話を聞いた。
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「なあんだ、意識変えたら再就職なんて大したことないじゃんって。いい企業じゃなくても、居酒屋の厨房だって、ファミレスの店員だって働けるじゃんって」――勤続年数15年。退職金655万円。昨22年に退職した元CA(かつてはスッチー、客室乗務員)お目目パッチリひまわりフェイスのY子さんの口は滑らか。
栗色のヘア。白いセーター。
〈ロイホ〉で煮込みハンバーグランチを完食し、ドリンクバーを往復する。その間のインタビュー。
「JAL辞めてなにも自信ないって。CA以外の仕事無理って。同僚からへこみメールしょっちゅう。
でもまあそう思うのはしょうがないとこもあんの。先輩のおばさまから『あなたたちは日本航空のために忠を尽しなさい』『わが社に全身全霊で貢献しなさい』そればっか、いわれてきたんだもんね。
なにが全身全霊よ。でも外に飛びだせば、JALはしょせんJAL。世界は広いぜ。仕事なんていくらでもあるぜと。
英語少しできるしぃ、一般常識もマナーも、合コンでつちかった人脈もあるぞと。それ生かそと。あとで、合コン結婚の話もフリン話もお教えしますけど」――Y子さん、退職時の〈辞令〉ほか、社長ご挨拶も見せてくれた。
「○○Y子殿 長い間のご勤務、本当にお疲れ様でした」と始まり、会社も結構がんばったけど、「特別早期退職制度を断腸の思いで実施いたしました」そのことをご理解いただき、退職してください、と。
今後は「Y子さまが夢と情熱をかけられたJALを必ずや再建」させますから、あなたもがんばってくださいね、という内容である。
これに別紙がついていた。「国内線私用搭乗 50%割引 国際線私用搭乗 90%割引 利用停止」
「辞めて、職安行きました。そこでびっくりしたの。化粧、ヘア、美意識のかけらもない人たちに。でも、すぐにこれが普通だと気づいて。あたしたちはメイク、歩き方、坐り方まで徹底されたけど、そんなあたしたちがこの世にどんだけいるんだよって。世界はJALとCAだけでモッてるとこれまで思ってたんです」
※週刊ポスト2011年2月11日号