デフレ不況、モノが売れない時代でも、めちゃくちゃ売りまくるビジネスエリートはいる。各界の「ナンバーワン営業マン」を取材してみると「モノ売る人々」の法則が見えた。
理論やデータで裏付けされた営業戦術がある一方、昔ながらの“ドブ板”で顧客を広げる営業マンもいる。
パナソニック国内営業グループの藤田英治氏(36)は、同社の主力パソコン「レッツノート」の法人営業を担当して、年間3万台という社内トップの成績を収めた。そんな藤田氏から成功の法則を3つ聞いた。
●“関西人”を演じる
同僚から「昭和の営業マン」と評される藤田氏の真骨頂は、巧みな話術である。「もともとは喋るのが苦手で営業職に向いているとは思えなかった(笑い)。でも、仕事なのでやらざるを得ない。参考にしたのが日本一話術の巧みな関西人です」
例えば藤田氏が着目したのは、見栄を捨てた関西人気質だという。「関西のおばちゃんは、『これナンボで買うたと思う? 100円やで』と簡単に自らを晒け出す。そこに嫌らしさを感じさせませんよね。商談で背伸びしてもしょうがない。だから、顧客の質問には、正直に答えます」
●最初は他社商品を褒める
他社製品とのコンペでも、藤田氏は、独自美学を貫く。「他社製品を潰し合うコンペはよくありますが、否定から入ると、聞いてる方も気分が悪い。だから私は他社製品を徹底的に研究して、褒めるようにしています。で、核となる選定条件の説明の段になって、『ウチにはこんな性能がありますが、A社の製品はまだ備えてません』とアピールします」
●最後は泣き落とし
無論、綺麗事だけで商談をまとめてきたのではない。「コンペで、万策尽きたら、最後は泣き落とししかない。お客様の前に泣きそうな顔で座り続けて、出禁寸前まで粘ったこともあります。それも自社製品に自信があるからこそできることですが、『きみには負けた。きみ(の気持ち)を買うことにした』なんていわれると、営業マン冥利につきます」
最後は商品の性能やブランドではなく、その心意気が評価されるようだ。
※週刊ポスト2011年2月11日号