日本人には他人のモノ真似を評価するという価値観がある。外国の文化やライバル企業の製品を真似することに引け目や抵抗がなく、むしろ模倣して成功することを奨励してきた。その危険性を、お茶の水大学名誉教授の外山滋比古氏が指摘する。
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日本が今なすべきは、独創性を持った人材を育てることだ。日本の悪弊である「模倣・借用文化」を修正するのは並大抵のことではない。だからといって個々の大学に自主的な変革を期待しても未来永劫実現する可能性はないだろう。
古い教育システムを打破するためには、政治的な力で新しいタイプの大学を作るしかない。現在のように22歳で学部卒、27歳で大学院修了などという時間ばかり掛かる教育システムでは人材は育たない。優秀と認めた学生には飛び級を認め、22歳で大学院が終わるようにできないものか。のんびりゆっくりはいけない。
そのためには中学卒業時点で高卒の学力、高校卒業時点で大学卒レベルにする必要がある。教育の中身も重要だ。高校卒業時点までに基礎的な知識修得課程を終える。以降は独創的な課程に入り、知的創造性を十二分に伸ばしていく。
こうして育てた学生が100人もいれば日本は劇的に変わる。日本を覆う閉塞感を突き破るには、こうした教育改革以外に道はない。
【プロフィール】とやま・しげひこ/1923年愛知県生まれ。東京文理科大学(現筑波大学)英文科卒業後、東京教育大学助教授を経て、お茶の水女子大学教授、昭和女子大学教授を歴任。83年に出版した『思考の整理学』は150万部を超えるベストセラーに。その他、『知的創造のヒント』『忘却の整理学』など著書多数
※週刊ポスト2011年2月18日号