中国、韓国、日本、そして米国……。各国の教育事情には大きな隔たりがある。大前研一氏が解説する。
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アメリカで受験戦争が激化したのは、どこの大学のどの学部を卒業したかで給料に大きな差がつくようになったからである。
私は母校であるMIT(マサチューセッツ工科大学)の取締役会メンバーを5 年ほど務めたが、米経済誌『ビジネスウィーク』が毎年発表する学部ごとの全米ランキングが学部長の評価に使われた。順位が落ちた学部は改善計画の提出を求められ、極端な場合には学部長を代えたり、上位校から引き抜いてきたりする案も検討された。卒業生の就職先、年俸などに基づいてランキングが付けられるため、入学志望者にとっても大きな指標となる。
ビジネススクールについてはもっと極端で、卒業生の平均初任給(オファー)はいくらだったかのランキングが出る(アメリカの会社では入社時期が同じでも、学歴と能力によって個々人の給料は大きく異なる)。それを基に、ビジネススクールの授業料の差が何年分の給料の差で取り戻せるかを計算し、志望校を決める。
つまり、仮に2年間の授業料が一流ビジネススクールは20万ドル、二流ビジネススクールは7万ドルの場合、それに対する投資利益率が何%で回収期間は何年かを比較するわけだ。その結果、授業料が高くてもハーバードやスタンフォードなどの一流ビジネススクールを卒業したほうが得だということになり、そちらに殺到することになる。
こうした背景から大学が給料を稼ぐための“道場”となり、かつての日本と同じくカネのかかる受験勉強に励むようになってしまったのである。
※週刊ポスト2011年2月18日号