2009年春、4年制の大学への進学率が初めて50%を超えた。1965年には10人に1人、1990年に4人に1人だったのが、いまや2人に1人以上が大卒だ。ところが、「最高学府」で学ぶ若者が増えたことは、ちっともこの国の発展に繋がっていない。なにしろ、その学府の中身ときたら……。
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東京都心の閑静な住宅街に、某私立大学のキャンパスがある。偏差値は40程度で、底辺校といわれる大学だ。平日の昼過ぎ、授業中の教室を覗くと、小学校の「学級崩壊」よりもひどい光景が広がっていた。
現代史学の講義中で、生徒は約200人。講師に背を向けておしゃべりに興じる生徒など、まだかわいいものだ。見渡すと、ハンバーガーとポテトを頬張る女子学生、4人で固まってポータブルゲーム機を弄ぶ男子学生たち、大きなイヤホンをつけて肩でリズムをとる者、机に突っ伏してイビキをかく者……。ペンを持ってノートに向かっているのは数人だけ。
講師が声を張り上げる。「静かにしなさい。そこッ、テストの時に食べ物を食べていたら、即アウトですからね!」
唖然とするような注意だが、それぐらいでは生徒は見向きもしない。数分後、講師の堪忍袋の緒が切れた。
「講義は聞きたい人にだけやります。出席はしたことにしてあげますから、聞きたくない人はもう帰ってください!」
一瞬、教室が静まりかえったかと思うと、学生たちは次から次へと立ち上がり、教室から出ていった。残ったのはたった15人だけだった――。
※週刊ポスト2011年2月25号