中国系資本による日本企業の買収が、近年、活発化している。M&A仲介会社レコフの調査によると、中国企業による日本企業買収件数(2010年)は、前年比42%増の37件と過去最多となり、アメリカ企業による買収件数を初めて上回った。その実態を、フリーライターの清水典之氏が報告する。
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10年2月には高級ゴルフ用品メーカーの本間ゴルフが、中国企業が出資するマーライオン・ホールディングスの傘下に入り、3月には金型大手のオギハラが所有する工場を、中国の自動車メーカー、比亜迪汽車(BYD)が買収した。さらに5月には、レナウンが中国の繊維大手、山東如意科技集団の傘下に入り、日本の経営者に衝撃を与えた。
中国資本の狙いは日本企業の持つ「技術」と「ブランド」だと言われる。たとえば、BYDは電池メーカーから自動車に参入した企業で、オギハラから自動車ボディなどの金型技術を得ようとした。経営難に陥ったレナウンや本間ゴルフを傘下に入れたのは、ブランドを欲したからである。
中国系資本が企業買収に乗り出したときに、反発が起きるのは中国側も熟知しており、近年は、水面下で買収を進めるケースが増えている。オギハラのケースにしても、同社は記者会見を開かず、工場売却を内密に進めていた。
長引く不況で、技術やブランドはあるが、経営危機に陥った日本企業をターゲットにますますM&Aが活発化する可能が高い。
日本工業大学大学院の横田悦二郎教授はこう言う。
「大企業は時価総額が高く、発行済み株式数も多いので買収される危険は低く、小企業はいざとなれば従業員全員が辞めて新たに別会社を作ればいいので問題ない。狙われた時に一番防ぎようがないのが従業員1000人規模の中堅企業です。
どう防衛すべきかといえば、今はグローバリズムで水平分業が進み、業種が細分化されすぎているので、逆に垂直型に戻す。そうすれば、時価総額が大きくなり、買収がしづらくなる。たとえば、デンソーのような会社が金型や部品のメーカーも吸収して製品を一貫製造する体制にすべきです」
※SAPIO2011年2月9日・16日号