いつからか、この国は「権利」や「自由」ばかりが幅を利かせ、義務や責任はどこかに消えてしまった。「日本人の劣化」に警鐘を鳴らしてきた石原慎太郎氏は、そうなってしまった理由をどこに見ているのか。石原氏が語る。
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東京都がオリンピック誘致に努めていた頃、IOC会長のジャック・ロゲとヨットレースの話をしたことがある。
ロゲは私と同様、オーシャンレースにも出場するヨットマンです。私は日本外洋帆走協会の会長や理事だった時に、沖縄レース、小笠原レースなどを創設したが、最近では、若いクルーが集まらなくて出場する船がない。
私は最近、現役復帰してレースにも出ているが、長丁場の危険なレースとなると、確かに若いクルーがいない。なにしろ、エントリーしたクルーで一番若いのが60歳だから、沖縄からトカラ列島を通るタフなレースは諦めるしかなかった。
ロゲにそう話すと、「ヨーロッパでも同じです。若いクルーは金で集めないと乗らない」という。そして、「結局、若者を駄目にしたのは3つのスクリーンですね」というのです。それは携帯電話、テレビ、パソコンである、と。
確かに、日本ほどくだらないテレビ番組ばかりやっている国はめったにないと思うが、携帯にしてもパソコンにしても、機能ばかりが進みすぎて、それが日本人を堕落させてしまったことは事実でしょう。
※週刊ポスト2011年2月25日号