英国の『ミリタリー・バランス』(2010年度版)によると、徴兵制を採用する国は、韓国、ベトナム、イスラエル、ロシアなど約50か国だが、世界の徴兵制度には「お国柄」もあらわれる。
変わり種はタイ。期間は2年と定められているが、陸、海、空に加えて「徴兵免除」の4つをなんと「くじ引き」で決める。抽選は国民の一大行事で、テレビ中継までされる。一番過酷といわれる「海軍」を引いた若者が、ショックのあまり失神するシーンは世界的に有名となった。
女性に兵役があるのはイスラエル。期間は男性より約1年短いが、特殊部隊などに配属されることもある。周囲をアラブ諸国に囲まれ、常に戦争と隣り合わせという事情が色濃く影響している。
近年は徴兵制を撤廃する国が増えた。フランス、オランダ、ベルギーなどが冷戦崩壊後の1990年代に志願制に移行。兵器がハイテク化する中、兵士の「数」より「質」を重視するようになったためだ。最近では昨年7月にスウェーデンが徴兵制を廃止したが、理由は「財政難」だった。ドイツでも憲法上の兵役義務条項はあるが、徴兵制撤廃を昨年9月に決定した。
逆に、最近になって徴兵制を導入したのがマレーシア(2004年)。抽選で選ばれた18歳以上の男女が、国防省の管理下で6か月の共同生活を送る。愛国心や団結力を培うことを狙いとしており、多民族国家ならではの制度となっている。
※週刊ポスト2011年2月25日号