今後、創造力やリーダーシップを持った日本人を輩出するために何をすべきなのか? また、そのための問題点はどこにあるのか? 大前研一氏が解説する。
* * *
これから日本は、答えのない世界で答えを見つけ出して果敢に実行する創造力やリーダーシップを持った人材を生み出す必要がある。そのため、語学やIT、ロジカル・シンキング(論理的思考)を重視した教育を、国家プロジェクトとして推し進めなければならない。
だが、それは文科省にはできない。英語教育は先生のレベルが低すぎるし、ITも中学校では先生より一部の生徒のほうが精通している、という現象が起きている。ギリシャ時代に学問として完成していたロジック(論理学)に至っては、文科省の教育には科目すらない。
つまり、国家を挙げて取り組まねばならない問題ではあるけれども文科省が関わったら失敗必至、という矛盾が存在している。
したがって文科省は英語やITから手を引くべきある。では、誰がその重責を担うべきか? 志のある個人でも企業でもよい。あるいは今後日本国内の需要が激減する進学塾・予備校がこの分野をゼロから研究し、北欧型の新しい教育産業を担う覚悟で生まれ変わることを期待したい。
これらの企業は現在、学校での成績向上や受験合格を目的とした“予備校”だが、今後は卒業後に役立つ語学、コミュニケーション力、ロジカル・シンキング、ITスキルなどを早くから教える方向にシフトすべきだ。世界で勝負できる人材を学生時代から養成するための全く新しいプログラムを開発するのである。
※週刊ポスト2011年2月25日号