やはり就職が厳しい、厳しいと言い過ぎるのも考えものだ。言えば言うほど、学生は不安になるし、そうした学生の弱みにつけ込んだ悪徳ビジネスが横行するようになるからだ。そう危惧していたら、言わんこっちゃない。実際、全国で就活がらみのトラブルが続発している。ジャーナリストの沢野竜一氏が報告する。
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行政処分を受ける業者も登場した。英会話教室などを運営するフォートレスジャパン社(本社・東京都新宿区)は、強引な勧誘などが特定商取引法の違反行為と認定され昨年2月に6か月の業務停止命令を受けた。
同社の被害者となったのは関東地区の男子学生Cさんだ。就活中に同社の社員に街で声をかけられた。断わったが「名前と連絡先だけでも」と粘られ、急いでいたためについ教えてしまったという。
数日後、電話で呼び出され、「就職活動を成功させるには、自分を変えなければいけない。即戦力になるための人間力と英語力を身につければ必ず就職できる」と説き伏せられた。
拘束時間は4時間半を超え、疲れ果てたCさんが「帰りたい」と訴えても「このままでは就職できない。今ならまだ間に合う」と言われたという。根負けして70万円の契約をさせられた時の社員の言葉がふるっている。
「自立した人間になるため、契約は親に内緒にしておけ」
後日、“人間力をつける”講座内容を知ったCさんは仰天。列挙されていたのは「縄跳び」「綱引き」「騎馬戦」「カルタ取り」などだった……。
国民生活センターには就活学生を狙った「教室・講座」の契約トラブルの相談が2004年度以降1429件も寄せられている(11年1月25日現在)。内訳は外国語・会話教室が6割を超え、自己啓発セミナーと資格講座などが続く。平均契約金額は約64万円と高額で、就活学生をカモにする“うまみ”が窺える。
悪徳業者の手口には共通点が多い。
まず大学や就職説明会場から出てきたところを呼び止め、「就職活動で困っていることは?」といったアンケートに名前や電話番号を記入させる。
後日「就職活動に有利な話が無料で聞ける」「キミだけに教える」などの甘い言葉で会社やファミレスなどに呼び出し、1対1で長時間にわたり、英会話教室や資格講座の契約を迫る。
学生が契約を断わると、彼らは「このままでは就職がうまくいかない」と追いつめる。業者はこんな言い方をする。「君は優柔不断で決断力がない。だから就職できないんだ」
「親に相談する? そのこと自体が自立できていない証拠だよ。情けないね」
※SAPIO2011年3月9日号