性同一性障害(GID)には、体は男性だが心は女性であるMTFとその逆のFTMがある。
世田谷区議会議員を務める上川あやさん(43)は、MTFで、小さいころから男の子としての自分の性に違和感があったという。小学校入学前から仲良くなれるのは女の子のみ。「ぼく、オレ」とはいえなかった。
中学にはいって第2次性徴が始まると、体毛が濃くなり、手の血管が浮き出て筋肉質になっていくのが嫌で、真夏でも長袖、長ズボンのジャージーで過ごしていた。
「自我を形成していく大事な時期に、自分が何者なのかわからず苦しみました。同性に惹かれる自分はおかしい、変態なんだと思いました。この世の中には誰ひとり、本当の自分を理解してくれる人はいないと絶望していました」(上川さん)
17才のとき、同級生の男の子との交際に破れて、母親に「男性にしか惹かれない」ことを告白する。母親は、そんな上川さんの話に驚かなかったという。
漠然と上川さんの違和感に気づいていたという母は、「そういう人もいる。人に迷惑かけなければ悪いことじゃない」と理解を示してくれた。
大学卒業後、公益法人でサラリーマンを経験するが、男性として働くことからくる極度の心労で退職。ホルモン療法、性別移行の手続きを始め、1998年にGIDであると診断を受けた。しかし、世間の目は厳しかった。戸籍上の性別と外見の差があって、家も探せない。正社員として就職もできない、健康保険も使えなかった。
そして2003年、こうした状況を自ら変えるべく区議選に立候補し、GIDをカミングアウトして当選を果たした。2005年には特例法に基づき、性別を変更し、戸籍も女性名にした。
「障がい者やうつ病などの病気の場合は、家族が味方になってくれることが多いですが、GIDのような性的マイノリティーは家族に否定されることが多い。私の場合は、母が味方になってくれたことが大きな支えになりました」(上川さん)
※女性セブン2011年3月3日号