毎週のように新聞・テレビで大々的に報じられる「世論調査」の結果。政治家もメディアも数字を根拠に政局や政策を論じるが、果たしてその「世論」は信頼に足るものなのか。メディアの情報操作を扱った『スピンドクター』などの著作がある窪田順生氏が、内部資料と調査担当者の証言などをもとに、世論調査の裏側を明らかにする。
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世論調査をしている現場では、調査のあり方に疑問の声は上がっていないのか。
「僕のノルマは12人でしたが、2人だけしか会えませんでした。2人とも40代の女性です」
そう語るのは今年、ある新聞社の面接式世論調査に参加したアルバイト男性である。2日間にわたって、東京都のひとつの区内を、世論調査担当部門から手渡された12名の名簿をもってひとりひとり戸別訪問したが、20~30代は不在か拒否。一緒に参加した友人も口を揃える。
「28歳のサラリーマン男性宅は4回訪ねましたが、結局会えずじまい。会った7人は、40代から50代後半。男女はちょうど半分ずつです。20代、30代は会えませんでした」
要するに、彼らが聞いた「世論」は40代以上しかないということである。
コンピュータが無作為に選び出した固定電話にかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)方式という最もポピュラーな電話調査も実態は同様だ。峰久和哲・朝日新聞編集委員は新聞業界誌『ジャーナリズム』のなかで、「有権者に占める20代の割合は14%ですが、RDDだと、残念ながら5%しか取れません」と明かしている。
かなり偏った集計だが、なぜこれが「世論」といえるのか。共同通信社の世論調査を担当する世論総合研究所所長の谷口哲一郎氏は次のように説明する。
「20代については3~4倍ぐらいのウェイトをかけて数字を補正しているんです。もちろん年齢だけではなくて、地域の偏りなども補正して実態に近づけます」
だが、このような「若者不在」こそが実態を反映しているのだとの指摘もある。前出『ジャーナリズム』誌に登場した鈴木督久・日経リサーチ取締役はこう述べている。
「若者に到達できないという意味では、世論調査と選挙の投票結果とは非常に似ているんですよ。これが世論調査による選挙結果予想が当たる秘密です」
鈴木氏は「世論調査はそれでいいとは言えません」ともいう。だが、実情は若者不在の「世論」であることは間違いない。
※週刊ポスト2011年3月4日号