花八層倍、薬九層倍、お寺の坊主は丸儲け。花は元手の8倍、薬は元手の9倍の利益があり、坊主は「元手なし」で儲かるという言葉だ。お寺には具体的にどんな“特典”があるのか。現役の住職であり税理士でもあるショーエンK氏が「お坊さんの恵まれた一生」を語る。
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お寺の収入がどうなっているかを紹介しましょう。
日本消費者協会のアンケート調査によると、葬儀のお布施の全国平均は50万円を超えています。しかも、過去25年の間、上がり続けているようです。葬儀での読経は長くても約1時間。つまり時給50万円、しかも、安心の現金一括払いです。
葬儀だけではなく、「彼岸の供養」や「盆の供養」、「塔婆供養」や位牌や仏壇を新しくした時の「開眼供養」、そして、「賽銭収入」もあります。
お寺に行くと、献灯台があり、ろうそくが「1本100円」などと書かれているのを見たことがあると思います。ろうそくは、ホームセンターなどでお徳用パックを買えば、1本あたり3円ほどです。実に、「利益率97%」というわけです。これは、民間企業がやればただの「ぼったくり」ですが、お寺は、そうするからこそ「非課税」となっています。
というのも、判例によれば「民間事業者と価格面において競合しないこと」が宗教行為かどうかを見極める要件の一つになっているからです。「3円のろうそくを100円で売る」から、そこにありがたみ、宗教的意味が生まれるのです。
このような収入のほかにも、葬儀や法事のあとで当家から頼まれて、お寺が料理店や仏具店、石材店を紹介することがよくあります。すると、のちほど業者から感謝のお気持ち、つまり紹介料が届くのです(もちろん、紹介料を受け取らないお寺もたくさんありますが)。
このように色々な収入があり、税金も優遇されていることから、よく、「高級車を乗り回したり、飲み屋で羽振りのよい、なまぐさ坊主がいる」と、否定的なイメージで語られることがあります。
しかし、現実にはこうした「金持ち坊さん」は少数派です。一般に、檀家数が1000を超えないと、本業だけでお寺を安定的に運営することはできないと言われます。私が兼業で税理士をしているように、お坊さんにはさまざまな「職業」を持っている方がいます。医者、弁護士、画家、料理人、中には女子大生の住職もいます。
もっとも一般的なのが、学校の先生や市役所の職員などの「地方公務員」です。公務員の副業は禁じられていますが、お坊さんは公務員の副業にあたらないのです。
50代になると、民間企業ではリストラを心配する方も多いでしょうが、「お寺」は基本的には潰れる心配のない“優良企業”であり、そこの社長である「住職」は定年もリストラもない安定雇用です。もちろん、60~70歳になっても、働き続けられます。
息子に住職を継いで退職する時は、退職金がお寺から支給されます。その場合(これはサラリーマンの方と同じですが)、40年間務めた場合は2200万円までは無税となります。それでも、事実上、“会長”のような立場で仕事を続けることは可能です。
※SAPIO2011年3月9日号