やはり就職が厳しい、厳しいと言い過ぎるのも考えものだ。言えば言うほど、学生は不安になるし、そうした学生の弱みにつけ込んだ悪徳ビジネスが横行するようになるからだ。そう危惧していたら、言わんこっちゃない。実際、全国で就活がらみのトラブルが続発している。ジャーナリストの沢野竜一氏が報告する。
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都内の男子学生Eさんは、会社説明会の帰りに“キレイなお姉さん”に声をかけられ、誘われるままファミレスへ入ったという。女性はいきなりこう切り出した。
「そのスーツはダメね。就職活動は身だしなみが大切。そんな格好ではうまくいかないわ。思い切ってスーツを新調したらどう?」
戸惑っていると、彼女の同僚という男が現われて隣に座った。2人に挟まれて席を離れられなくなったEさんは2人がかりで「スーツを買えば就職できる」と迫られる。
「そんなおカネありません」と拒否すると、「先行投資よ。就職したらすぐにお給料で払えるでしょう」と言われた。
数時間にわたって“監禁”されたEさんはヘトヘトになり、70万円のスーツを月2万円の分割払いで買う契約書にサイン。後日送られてきたスーツは量販店で買ったようなペラペラの生地だった。
※SAPIO2011年3月9日号