近ごろ、「かわいく見せたい」「誰にも見られてない気がして落ち着く」「自分の顔に自信がない」などの理由から、インフルエンザでも花粉症でもないのに、普段からマスクをして過ごす若者が増えているという。
本誌が東京・渋谷のセンター街で、マスク姿の10代~30代100人にアンケート調査を実施したところ、男性9人、女性22人の計31人、つまり約3割が“だてマスク”だった。“だてマスク”で顔を隠した彼らは、「誰とも話したくない気分だから」(19・大学生)、「表情をつくるのが面倒臭くて」(16・高校生)、「眠いのを隠すため、バイト中はいつもする」(25・ショップ店員)、などと口々にその理由を語った。
若者文化の調査・研究をしている博報堂若者生活研究室のアナリスト・原田曜平さんはこんな指摘をする。
「メールやSNSなどネット上のコミュニケーションに慣れた若者が“だてマスク”をするようになっているのではないでしょうか」
さらに原田さんは続ける。
「人間のコミュニケーションは本来、言葉つきや相手の表情を含んでとられるものでした。顔が見えない電話でも、言葉つきはわかりますよね。それが、携帯やパソコン上の文字だけのコミュニケーションでは、そのような要素がないため、互いに本音を隠したままでことを進めることができる。それに慣れてしまった若者たちは、まず自分の本音を他人に知られることが怖い。そして自分の弱みを知られることを嫌うのではないでしょうか」
“だてマスク”は一過性の流行なのか、それとも、新たな問題へと続く現象なのかーー精神科医で教育評論家の和田秀樹さんは、こう警鐘を鳴らす。
「リアルなコミュニケーションを避けるのは、社会不安障害に近い症状です。マスクは、引きこもりにならないよう何とか外に出るための一種の防衛装置ですね。おそらく、“だてマスク”をしている若者たちは暖かくなればはずそうと思っている人が多いでしょうが、表情を読まれないことに慣れると癖になってしまう。春以降もマスクに依存してしまう人は多いと思いますよ」
和田さんの指摘からすれば、花粉症の季節が終わってからもマスクを手離せないという人は、“引きこもり予備軍”である可能性も否定できない。
※女性セブン2011年3月10日号