外交評論家・加瀬英明氏(74)は、日本人の行き過ぎた“言霊信仰”が現実を見えなくすると指摘する。「国連」はその最たるものだという。
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「国連」という呼称そのものに問題がある。1941年12月8日、日本は真珠湾を攻撃して太平洋戦争に突入した。翌年1月1日にルーズベルト大統領が日本と戦っている諸国をワシントンに集め、「我々の同盟を『ユナイテッド・ネーションズ』と呼ぼう」と宣言した。「連合国」である。
東京を焼き払い、広島、長崎に核爆弾を投下したのは、ユナイテッド・ネーションズの空軍だった。1945年に国際機関の「ユナイテッド・ネーションズ」が誕生したが、中韓両国が「連合国」と正しく呼んでいるのをはじめ、世界の国々はそれぞれ「連合国」と訳している。太平洋戦争終結直前に産声をあげた国際機関である“国際連合”への加盟条件は、「日本と戦っている国」だった。
日本はこの「連合国」を「国際連合」と誤訳して平和の殿堂として崇めている。これを世迷い言といわずして何といえばいいのか。
※週刊ポスト2011年3月11日号