昨年は首都圏で小学校の卒業者30万3493人のうち、約2割にあたる6万1500人が中学受験に挑戦、今年も同規模が受験したといわれている。現在の中学受験の状況について、ある塾関係者はこう話す。
「大学の系列校が新たに開校するなどして定員は増えましたが、上位校の競争の激しさは変わりません。不況や就職難などの影響で、“少しでも有利な学校に”と、学歴神話も復活してきています」
実は中学受験の歴史は古い。戦前までは、明治時代に創立された旧制中学を目指して激しい受験競争が展開されていたという。森上教育研究所代表の森上展安さんこう説明する。
「旧制中学から旧制高校に上がれば、旧制高校からは帝大に自動的にはいれたからです。旧制中学は学費が高く、いわゆるエリートや地主などの特権階級の人たちが行く学校。当時は進学率が低かったものの、学校の数も少なかったので競争率は東京なら10倍前後。大変厳しい入試でした」
戦後は、学制改革で中学受験は下火になった。いわゆる「6・3・3制」が敷かれ、誰でも中学までは無償で公立の学校に通えるように。庶民の所得も多くなかったため、中学までは公立へ行くのが当たり前となった。
公立中学から、難関大学を狙えるような優秀な公立高校を目指す。受験といえば、そのための高校受験が主流となった。1970年代までは、日比谷高校などかつて旧制中学だった都立の伝統校が東大合格者数の上位を占め、私立でも麻布や開成など旧制中学だった学校が人気を誇った。
しかし、1980年代になると庶民の所得も増え、しだいに中学受験に関心が持たれるようになる。最大の理由は、ドラマ『積木くずし』などに象徴される、“荒れる学校”への不安感だった。「私立のほうが安心して子供を任せられる」というイメージが定着したのはこのころのことだ。
1990年代はバブル崩壊後の景気低迷で中学受験は一時沈静化。ところが2000年代になると、再燃する。きっかけは“ゆとり教育”の導入だった。
「学校で教わる内容が3割減り、小学4年生で学んでいたことを6年生で、中1で学んでいたことを中3でというように、教わるのがどんどん後ろ倒しになっていく。ところが大学入試のレベルは易しくならない。“公立では勉強が遅れて無理だ”ということで、中高一貫の進学校が人気を集めることになったのです」(前出・森上さん)
※女性セブン2011年3月17日号