現代はまさに昇進とリストラが紙一重の時代。後ろ指さされることなく仕事人生を充実させ家族の生活を守る―そんな「幸福な出世」の法則を日商岩井(2004年にニチメンと合併して現在は双日)の社長に就任した安武史郎氏(現アステラス製薬社外取締役)に聞いた。同氏が重要視するのは「「人前で部下を叱らない」ということである。
「部下にやたらとキツく当たる同期がいましたが、私はどちらかというとなだめ役。入社当時、上司にコテンパンにやられて仕事の熱意が冷めたときがあったので、同じことはしたくなかった。皆がいる前で必要以上に叱責するのは絶対にNG。どんなときにやる気が出るのか、モラルが低下するのかは非常にシンプルなんです」(安武氏)
また、続いて重要だと考えるのが「上司に話しかけるタイミングに気を遣う」ということ。というのも、上司のやる気を削ぐ行為も部下は慎まなければならない。上司の気分や状況を読むことも重要だからだ。
「外回りから汗だくで帰ってきて一息つこうかというときに『安武さん、この提案なんですが』と部下が相談を持ってくると疲れが倍増する。水でも持ってきてくれて、『後で少し話があるので落ち着かれたら声をかけてください』と気遣うのも部下の役目でしょう」
場の空気を読めない人が時代の空気を読めないのはいわずもがなである。
そして、3つ目は「人の誘いを断わらない」である。
「社内外の人間とは常に意思疎通をはかったほうがいい。どんな仕事もギブ&テイクが基本。ゴルフを一緒にしたり、裸でお風呂に入ったり、飲みにいったりして本音を聞き出すのも大事な仕事です。断わってばかりではいい仕事はできないでしょう」(安武氏)
もちろん、どうしても都合がつかないこともあるだろう。そういうときは「次は必ず」と答えておいて、後日、自分から誘うべき。「付き合いの悪い奴」と見られないことが肝要なのだ。
※週刊ポスト2011年3月18日号