ネット時代、最近では「犬のネットオークション」まで存在する。その実態をジャーナリスト・山藤章一郎氏がリポートする。
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ネットオークションでも売った側、買った人のあいだで、トラブルが急増している。以下、国民生活センターへの相談。
「届いて2日で死んだ」「骨折しているみたいだ」「下痢がひどい」「朝から晩まで喉が切れるくらい吠える」「約束した血統書がついて来ない」
ネット販売では実物を見に行く人ばかりではない。映像だけで飼う人も多い。
販売者にも会っていない。どんな人物か知りようもない。気に入ってクリックするが、〈遠隔地〉は普通である。
最初から確認には来られないことを前提に「ぜひ見に来てください」と書きこむ業者もある。そして、病気にかかっていると分かっていても売ってしまう。
あるショップの犬たちはみな、大きな瞳を光らせて可愛く見える。強いストロボを当てて撮影したり、写真そのものに加工をしているのではないかと、フォトショップの専門家はいう。
トイプードルなど、色が値段を左右する犬には、フォトショップで加工する。届けられた犬の色が薄いという抗議は「成長すると薄くなる」とあしらう。
<NPO 地球生物会議>の野上ふさ子代表は語る。
「ペットショップの犬も苛酷です。従業員が病気の犬をさわった手で別のを触わる。それで感染症が起きる。あるペットショップでは11%も死んでいるといいます」
骨折して商品にならない。繁殖能力が尽き、用済みとなった。売れ残って、エサを食うばっかりだ。それらが殺処分に持ち込まれる。
平成20年度、東京の殺処分は371匹。意外に少ない。だが、茨城は5467匹。埼玉2642匹。千葉4289匹(ALIVE全国動物行政アンケート調査H21年度)。
ペットの巨大マーケット東京を支えるブリーダーが、近郊県で営業しているためと考えられている。全国の殺処分数は約17万匹。
※週刊ポスト2011年3月25日号