枝野幸男・官房長官は、終始この問題でスポークスマンを務め、落ち着いた受け答えを評価する声もあった。ただし、不正確な情報で誤魔化しながら「とにかく安全です」と印象づけることに主眼を置いていたことは否定し得ない。
例えば、最初に問題が起きた1号機では、「(燃料を冷却するための水の)水位は保たれている」と述べ、その建屋が水素爆発した際には、5時間も経ってなお「何が爆発したのかわからない」ととぼけた。さらにマニュアルにもない海水注入という非常事態に陥っても「コントロールできている」と安全宣言を繰り返した。3号機についても「水素が漏れている可能性があるが、ベント(排気)しているから(大丈夫)」と説明したが、その翌日に建屋が吹き飛んだ。
過去に例のない重大事故なのだから、わからないならば「わからない」、危険があるならば「危険な事態だ」、想定外の展開になったのならば「初めての試みなので、どうなるか正確には予測できない」と、正直にいえばいいのだ。
インターネット、特にフェイスブックやツイッターなどで、専門知識を持つ人たちが一般ユーザー向けにリアルタイムで情報提供、見解表明をしているなかで、政府だけが「安全」「大丈夫」「想定内」といっても、国民を安心させる効果すらないことを知るべきだった。
反対に、「政府は嘘をついている」という印象が刻々と増大してしまった。こういう大災害のなかで、当局発表の信頼性が失われてしまうことは、間違ったデマにまで信憑性を与える。
※週刊ポスト2011年4月1日号