「NHKは必要だが民放は要らない」という声をよく聞く震災報道。作家・五感生活研究所の山下柚実氏がメディアの語源からテレビ報道の在り方を問う。
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被災現場でどれだけメディア、とりわけテレビ局は現場の方たちの力になれているのでしょうか。被災者たちの今だ多くが、「連絡がとれない」「安否確認ができない」と不安の声を挙げています。
しかしたとえば、ある民放番組では、アナウンサーが被災現場に入って、亡くなった家族のことを被災者から聞き出しては泣かせる、といった現場レポートをしていました。今回の激甚災害の過酷さを、視聴者はすでに直感的に理解しています。これ以上、余分な強調や増幅はいりません。被災者に水をむけて泣かせようというのは、テレビ局自身のための演出行為に見えてしまいます。
その一方で、やはり民放ですが、被災者にボードを渡してメッセージを書いてもらい、それを映しながらマイクで言いたいことを話してもらう、という番組もありました。
いわば、テレビが、被災者同士をつなぐ「広域伝言板」に徹しています。「メディア」の語源は「ミディアム」=「間に入る」「媒介」という意味です。まさしく「媒介」役を果たしていました。電話などの通信網が寸断されている今こそ、原点に立ち返るなら、自ずとメディアの果たすべき役割が見えてくる気がします。