震災後、テレビの企業CMが自粛されている。しかし新聞広告には「お見舞い広告」が目につくようになった。
被災地で、取材活動を続けるジャーナリストはいう。
「広告クライアントは誰に対してお見舞い申し上げているのか。今回の被災地に新聞など届くはずがないし、ましてや読んでいる余裕もない。いっそ広告に使うお金を義捐金に回したほうがよっぽど効果的に使える」
また、お見舞い広告に関しては、こんな話もある。大手企業マーケティング部の社員が声を潜めていう。
「まだ地震の混乱冷めやらぬ頃ですが、大手新聞の広告局の方から弊社に電話がかかってきました。『御社も新聞にお見舞い広告を出しませんか』って。こんな非常時に営業活動するなんてありえない」
この社員は未だ安否不明の被災者を思い、電話を叩ききった。
だが、災害に乗じた営業活動は、新聞に限らず業界では日常的に行なわれていることだという。企業の被災地支援の裏には、打算と良心が渦巻く。一部企業には、“社会的責任”の意味をもう一度問い直す必要があるだろう。
※週刊ポスト2011年4月1日号