“日本離れ”が進んでいると言われる韓国で、今でも盛んに報じられるニュースは「日本の失敗」だと、産経新聞ソウル支局長の黒田勝弘氏は言う。
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韓国では近年、ある種の“日本離れ”が見られる。中国の台頭に対し日本の沈滞が印象的だからだ。商売から政治、外交……これからは中国が重要で「日本はもういい」というわけだ。
昨年、世界を揺るがせたトヨタ自動車のリコール問題は象徴的だった。あれはもちろん世界的ニュースではあったが、当事国の日本や米国を除けば、もっとも関心が高かった国は韓国ではなかったか。いや、メディアで言えば日本より韓国の方が扱いは大きくかつ執拗だった。
韓国人や韓国マスコミは、その民族感情から日本の失敗や日本に関するマイナス情報をことのほか喜ぶ。だからトヨタ事件に韓国は異常に沸いた。「ヒュンダイ(現代)」など韓国の自動車産業は、ライバルのミスを歓迎した。しかし同時に“他山の石”あるいは「明日はわが身?」という関心も高い。
こうした相変わらずの日本への関心からすると、必ずしも「日本離れ」だとは言えない。それでもトヨタの挫折つまり日本の後退が印象付けられたことは間違いない。
そして今年、米国の格付け機関による日本に対する国家信用度の低下も伝えられている。これまた日本より韓国での関心の方が大きい。韓国ではこれまで「日本沈没」は映画や小説で楽しまれていたが、それが今や現実的イメージになりつつあるというわけだ。
そこで、日本では今や「韓国に学べ!」ブームというではないか。とくに経済がそのようだが、なかでも最大財閥の「サムスン(三星)」に対しては神話的な評価になっている。創業者以来、韓国で最大の「日本に学べ」企業だったサムスンが、日本にとって「韓国に学べ」のシンボルになっているのだ。二代目の李健煕会長は、それでも「日本にはまだまだ学ぶことが多い」と手綱を引き締めているが。
沈滞の日本にとって「韓国に学べ!」はかっこうの刺激剤ということだろうか。ソウルの日本系テレビ局などは、韓国経済紹介の番組制作では「マイナスやまだまだの面はいいから、いい話だけを集めろ」と言われているという。これはもう報道というよりキャンペーンに近い。
※SAPIO2011年3月30日号