金子みすゞの詩、あいさつ励行アニメ、オシムの言葉、そして仁科亜季子・仁美母娘のがん検診……繰り返し放送されるACジャパンのCMだ。
「しつこい」「不快だ」という苦情も当時を上回る勢いでACに殺到した。ACジャパンは「広告活動を通じた公共の福祉への貢献」を目的に40年前に設立された社団法人だ。常務理事の高島邁氏は困惑を隠せない。
「CMの最後に流れる『エ~シ~』という高音のサウンドロゴに対する苦情が多く、音楽だけカットしてほしいとテレビ局にお願いしましたが、混在しているのが実情です。今年制作したCM13本のうち6本は震災後に内容がふさわしくないため放送中止をお願いしました。しかし、決めるのはテレビ局であり、私たちに権限はないのです」
ACは一般企業やテレビ・新聞などメディア、広告関連会社など約1200社が運営に参加している。年会費は一口12万円で、最高で60口の企業もあるが、ほとんどが一口だ。広告制作予算は1テーマ1200万円(新聞・雑誌・ラジオ広告も含む)で、広告料金がない代わりに、テレビ局は自由に使用できる。
「今、企業各社は震災向けのCMを急ピッチで制作している」(CM総研・関根建男代表)という。今後、世間の反応を見ながら徐々に広告出稿を増やすと思われるが、それまでは当分ACのCMは続く。テレビ局もACもお手上げ状態だ。
今回の騒動では、放送回数が多く芸能人であるためか、仁科母娘が不評の矢面に立たされている。仁美のブログには連名で「この状況は私達母娘も、想像もしていませんでした。(中略)被災された方々の事を思うととても複雑な心境です」と悲痛な胸の内を綴っている。なお、高島氏によると、なんと「ほぼノーギャラ」での出演だという。
※週刊ポスト2011年4月8日号