大事な場面では決断から逃げ、一方で国民向けには「5万人動員」、「10万人動員」と自衛隊の活動人数を宣伝して「指揮権」を誇示して見せるパフォーマンスは、あまりにも醜悪だ。
現地に派遣された陸上自衛隊の佐官が唇を噛む。
「人数ありきの派遣だったので、救援活動に適した部隊、装備が整っていない現場も多い。救援のプロとして派遣されたはずの隊員が、ボランティアと同じ作業しかできないというケースが多々あるのは悔しく思う。しかも、一度に10万人も動員したから交代要員もおらず、疲労だけがたまっていく。本来の任務である国防もおろそかになっている」
「官僚」ではないが、計画停電を東京電力に任せきりにしているのも同根の問題といえる。
敗戦直後の混乱期、日本は工業生産力を回復させるため、資材と資金を石炭、鉄鋼など基幹産業に優先的に配分して増産させ、インフラを整備するという「傾斜生産方式」をとった。現在の状況も、現実に電力が足りないなかで復興を進めなければならないのだから、どの産業や地域に電気を優先的に配分すればよいかを政府が判断すべきなのだ。批判や責任問題が生じることを覚悟してでも、ある程度の強権、超法規的措置が必要な場面である。
危機管理の専門家、大泉光一・青森中央学院大学教授はこう語る。
「国家的危機においては、政府が法律に基づいて電力供給をコントロールするのが当然です。政策当局でもない一企業に、どの地域や産業に電力を回すかの優先順位を決めることはできない。だから地域ごとの輪番停電になっている。政治の責任放棄で、経済にもマイナスが大きい」
逆にこの政権では、蓮舫氏に「節電啓発大臣」を兼務させ、海江田万里経産相まで「大停電が起こるから早く帰宅しましょう」と東電の広報マンになるなど、閣僚2人に民間企業の下請けをさせている。
※週刊ポスト2011年4月8日号