ライフ

計画停電実施を了承した菅首相 国民を信用していなかった

 世界中が震災後の日本経済の行く末を固唾を飲んで見守っている。その日本経済を左右する重要な要素の一つが電力確保だが、経済アナリストの森永卓郎氏は計画停電の実施に異議を唱える。

 * * *
今の日本がすべきことは、とにかく生産活動と消費活動を建て直すことである。そうしなければ、被災地の復興資金が生まれてこない。

 その意味で、東京電力による計画停電の実施と企業に対する節電要請は間違っていると私は考えている。

 特に、鉄道の運行制限には大きな問題がある。電車の本数が減り、都心から離れた地域では運行が中止されているが、そもそも鉄道は省エネで、電力需要は東電全体の2%ほどに過ぎない。節電効果はたかがしれているのである。

 その一方で、鉄道運行を制限したデメリットは非常に大きい。通勤できなくなる人が続出し、工場や企業は労働力を確保できなくなり、生産や営業を大幅に制限されている。電車の本数が減っているので、移動に時間がかかり、仕事の効率も下がる。会社へ遠方から通勤している人が是が非でも出社しようとすれば、自動車を利用するしかなく、渋滞が起き、ガソリンや軽油の消費が増える。そこへ、不安感から早めに満タンにしようとする人が加わり、ガソリンスタンドには大行列ができ、それが渋滞に拍車をかける。

 日本の物流はトラック輸送に支えられているので、燃料が不足し、渋滞が起きると、物流も滞る。被災地ではガソリン・軽油不足で困っているうえ、物流が滞って物資が届かないという非常にまずい状況になっている。

 都内では石油ショックの時のような計画停電パニックが起き、停電に備えて電池やカセットコンロ、食料を買いだめする人たちが溢れ、コンビニやスーパーの棚から商品が消えた。しかし、物流が滞っているから、補充もままならなくなってしまう。悪循環もいいところだ。

 では、計画停電を実施して電力需給はどうなったかというと、実施初日の3月14日は、想定していた電力需要を最大900万kWも下回った。電車や工場を止めた効果もあるが、節電を「お願い」したら、みな節電に全面的に協力したのだ。その後も需給がひっ迫するたび「お願い」が出たが、結局、大規模停電は起きなかった。

 日本人の優秀さがこんなところでも証明されたわけだが、逆に、計画停電実施を了承した菅首相は、国民を信用していなかったということだ。

 国民に対して節電をお願いしたら、現行の供給能力3300万kWに対し、400万~700万kwも余ったのだから、鉄道をフルで運行させ、工場も止めないようにすることは可能なはずである。
 
 現実に、混乱する鉄道運行に振り回され、コンビニの棚から商品が消えているのを見れば、このままでは日本経済がガタガタになるということは誰にでも理解できる。
 
※SAPIO2011年4月20日号

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
記者会見を行ったフジテレビ(時事通信フォト)
《中居正広氏の女性トラブル騒動》第三者委員会が報告書に克明に記したフジテレビの“置き去り体質” 10年前にも同様事例「ズボンと下着を脱ぎ、下半身を露出…」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
回顧録を上梓した元公安調査庁長官の緒方重威氏
元公安調査庁長官が明かす、幻の“昭和天皇暗殺計画” 桐島聡が所属した東アジア反日武装戦線が企てたお召し列車爆破計画「レインボー作戦」はなぜ未遂に終わったか
週刊ポスト
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン