「被災者たちを助けたい」と、すぐに行動を起こしたものの、その行為を取りまとめる国や公的機関の心ない対応に憤りを感じた人たちがいる。都内を拠点に活動する女性社長・A子さんもそのひとりだ。
大震災発生から2日後の3月13日深夜、A子さんは、支社と実家がある仙台へとマイクロバスを走らせた。積んだ物資は、粉ミルクやオムツ、ナプキン、女性用長靴、靴下など赤ちゃんや女性用のものが中心だ。しかし、現地でA子さんを迎えたのは、“そんな要望はないんだよな”という心ない言葉だった。
そう判断されたのは、ボランティアをまとめる立場に男性が多いことが理由のひとつとしてあげられる。被災地の避難所でボランティア活動をする女性はいう。
「送られてきた物資を受け取る担当は、中年の男性が多いんです。この前は、ムートンのブーツが支援物資として送られてきたんですが、ムートンを知らなかったらしく、“そんなものは、いらない”と返してしまっていました。ムートンは、温かくて長靴より重宝するのに…。ほかの避難所では、女性用の下着ですら受け取らないところがあるとさえ聞きました」
ボランティア活動に女性の視点を入れることの大切さを説く専門家も多いのが現状だ。
A子さんが支援に訪れたのは、実家や支社がある仙台市だけではない。いまでは原発問題で一部自主避難要請地域となっている福島・いわき市、津波で町民の半数が避難した宮城・南三陸町、2100人以上が亡くなった石巻市など。そのいずれの場所でも、“行政の壁”を感じたとA子さんは話す。
「100個の物資を持っていっても、その避難所に101人の人がいたら受け取ってもらえない。それは、ひとつのポテトチップスを3人で分け合っているような避難所でもそう。行政は公平が前提なんです」
逼迫している人たちを前にしても、杓子定規な決まり事を守ろうとする行政。A子さんの言葉には、憤りを通り越した無念の思いがにじんでいた。
※女性セブン2011年4月14日号