仙台市内で最大の遺体安置場所となっている宮城県利府町の総合体育館・グランディ・21。ここには多いときには500体もの遺体が置かれている。行方不明の身内を探す遺族たちは、ホワイトボードに貼り出された「身元不明遺体」の情報に目をこらす。記者が訪れた際は、A4サイズの紙に50遺体ほどの情報が書き込まれたものが、40枚近く貼り出されていた。
情報に記載されているのは、収容された場所、推定年齢や性別、身長の他、体格や頭髪、着衣といった身体的特徴、所持品など。遺体の損傷が少ない場合は顔写真も添付されているが、その数は僅かだ。
身体的特徴には「左手薬指に指輪」「靴下を二重ばき」「前歯が出ている」などと書かれたものから、「全裸」「眼球なし」と壮絶な最期を思わせるものもある。不明遺体の情報に心当たりのある遺族は「問い合わせ番号」をメモし、安置所の受付へ。そこで県庁職員のヒアリングを受けると宮城県警立ち会いのもと遺体と対面することになる。変わり果てた身内の姿に、遺族のショックは大きい。
「泣きながら安置所から出て来る方を見て、“ああ遺体で発見されたのだな”と思ったりします。しかし、一方では気持ちに区切りがついたのか、“見つかりました。ありがとう”と声をかけてくれる人もいます」(県庁職員)
遺体を見つけた遺族は、玄関に貼られた葬儀社一覧の中から葬儀社を選んで電話をかける。しかし、仙台市に1か所しかない火葬場は満杯状態で、不公平にならぬよう市では葬儀社1社あたり火葬は1日3体との取り決めをしている。
「身元が判明した遺体は葬儀社の遺体安置所に置いてもらう形になっているが、そこもいっぱいの状態。東京都など他府県からも火葬場を貸すとの申し出を受けているが、どうやって搬送するか。遺体の尊厳を考えると難しい」(仙台市健康福祉局保健衛生部職員)
※週刊ポスト2011年4月15日号