資源の乏しい日本にとって、原子力発電の推進は“国策”だった。そして原発は、都会に住む人にとっては、「危険かもしれないが遠い存在」であり、地方にとっては“生きる糧”だった。
原子力発電所が建設される市町村には、電源三法交付金によって、大きな財源効果がもたらされる。電源三法とは「電源開発促進税法」「特別会計に関する法律」「発電用施設周辺地域整備法」で、それぞれの法律に基づいて交付金が交付されるのだ。
経済産業省資源エネルギー庁が発表しているモデルケースでは、交付金は原発1基につき運転開始までの10年間で約450億円、運転開始後の35年間と合わせ、総額1200億円余りの巨額に上る。ほかにも、電力会社が地域振興のために寄付金を拠出し、その額も数十億円単位だという。
福島第一原発から半径20km圏内にすっぽりとはいり、避難指示が出されている富岡町の町議会議長・猪狩利衛さんがいう。
「原子力とともに共栄共存しとるわけです。原発ができる前までは、みんな東京に出稼ぎに行った。しかし、原発ができたことで、地元は全町民が潤っている。交付金によって財政が豊かになり、道路や下水道、インフラも整備された。学校や体育館、運動施設も整備し、ボーリングして温泉付きプールもつくりました。財政だけでなく、富岡町では、成人した就労者の約6~7割が第一原発か第二原発関係の仕事をしています。原発がなくなれば、3分の2は職を失うことになるんです」
※女性セブン2011年4月21日号