「テレビに出ている原発の解説者は御用学者ばかりだから、『安全』と繰り返すばかり」……インターネット上で見受けられるこうした意見には、確かに頷ける部分はある。政府・東電の無策無能は大いに批判されるべきではあるが、ことさらに『危険』を訴える「専門家」が多いのもまた事実だ。彼らの発言を検証してみよう。
朝日新聞4月3日付朝刊では、4月2日に広島県で反原発団体の県原水協と県被団協が主催した報告会に、〈内部被曝に詳しい〉矢ケ崎克馬・琉球大学名誉教授が登場し、〈「汚染される覚悟が必要。開き直って最大防御をすること」と強調した〉と伝えている。
しかし、この矢ケ崎氏は専門は物性物理学で、同様に放射線医学が専門というわけではない。
矢ケ崎氏は、東京新聞3月29日付朝刊でこんな発言もしている。
〈人工の放射線はすべて人体に有害。放射線量が少なくても必ず影響は出る〉
人工の放射線と自然の放射線では違いがあるということだろうか。
長崎県立大学シーボルト校の藤田祐幸非常勤講師も、メディアで活発に発言する学者の一人である。
毎日新聞4月5日付朝刊では、原子力工学が専門の九州大学の出光一哉教授が提案する事故の対策案を〈小手先の応急処置に過ぎない〉と批判し、さらに〈原発を止めても、他の発電方式と節電などで電力需要のピークはカバーできる〉と主張している。
しかし、藤田氏の専門は原子力工学でも電力システムでもなく、物性物理学である。3月26日に長崎で開かれた講演会の映像をユーチューブで見たところ、藤田氏自身が「金属物理学が専門だが、原発問題を扱う市民科学者としての道を歩む」と自ら語っている。
藤田氏に関しては、震災前の過去の言動もネット上で物議を醸していた。ウェブマガジンの『月刊チャージャー』2007年4月号にある「日本の原子力発電って大丈夫なのか?」という記事では、〈六ヶ所村の再処理施設は、事故が起きなくても1日で日本中の原発が1年間で出すのとほぼ同量の放射能(いわゆる死の灰など)を排出するといわれています〉とある。
だが、再処理施設も原発に準じる放射線防護基準で建設されている。
※週刊ポスト2011年4月22日号